人は使わない。使うなら家族

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必ず失敗する条件の一位は、人を使うことだと私は考えています。
もちろん何に使うのかと言うことによっても、失敗の仕方が違ってきますけれど。

コックさんの年収は
年齢と、前職でのポジションによって異なりますが、一般的な調理師で40才ならば、おおよそ年俸400万円というところでしょう。
給料が月額25万~ボーナスが年間4ヶ月程度支払うとして、これで400万円程度にはなるでしょう。
もちろんこれよりも安い350万程度の方もいらっしゃいますから、まあ一概に高い安いとはいえない内容です。
しかしよく考えていただきたいのは、なけなしの財産を切り崩してようやく起業されたオーナーにとって、この人件費は馬鹿になりません。
だってここでは最低100万円程度からの起業を検討しているわけですから。

ちなみに月収を20万円程度の中級コックさんだとして、一日あたりの人件費を考えると、20万÷22日=日給9100円。
9100円÷10時間=910円。時給910円となる訳です。ではこのコックさんの給料をきっちり支払うには、どれだけの売り上げが必要でしょうか。1日で計算すると9100円の利益が出ないと、赤字になるわけです。
もちろんお店の電気代や水道代、ネット使用料、その他消耗品のコストも考えなければなりません。そうするとおそらく1日あたり15000円程度の利益確保ができるのなら、給料を支払っても赤字にはならないという計算になります。

さて、今度は15000円程度の利益を出すには、どれだけの売り上げが必要か考えましょう。アルコールを専門に提供するお店と、がっつり食事系のお店では利益率が異なります。特に初心者の経営は、効率がよくないので、とりあえず原価率60%として計算すると、売り上げの40%が利益となるわけです。
これを当初の数字に当てはめると、37500円の売り上げが、連日必要になると言うことです。つまり月間売り上げが825000円必要になると言うことです。
これって、大変な数字だと思いませんか。もちろん起業された当時のお店の規模にもよるでしょう。客席数20席未満のお店とそれ以上の大きなお店だと、当然違ってくるでしょうし、客単価によっても違ってきます。
しかし、喫茶中心のお店で1時間あたり3750円(10時間営業として)の売り上げが必要だと考えればいかがでしょう。
小さなお店の送客席数と回転率は、1日あたり2回転までというお店が多いようです。(繁華街やターミナルは別ですよ)
この計算で行けば20席亭のお店は1日40人のお客が来れば、上出来だと言うことなのです。
でも実際には4人掛けの席に2人のお客様というようなこともあり得ますので、イメージとしては、毎時間お店の席が2割方お客様が入っているという様子です。

それらのお客様の客単価はどれくらいでしょう。ロケーションの問題もありますが珈琲など飲料専門店だと、客単価は350円程~400円です。
もう少し高いお店もロケーションによってはあり得るでしょう。
しかしここではリスクも考えて、350円としてみましょう。そうすると1日あたり売り上げは350×40=14000円となります。
つまりこの時点で、コックさんの給料は支払えないということになるのです。
しかし、「おまえの計算では、昼飯の客が計算されていないじゃないか」という方もいらっしゃると思います。
では昼ご飯のお客様が、20席全部に入り、そのうち昼食時間を2時間だけ客単価700円として計算すると、350×8×4=11200円 20×2×700=28000となります。この通常時間と、お昼の時間を足すと、39200円となりますから、一日あたり37500円の数字はクリアできます。ところでそううまく数字が上がるのかというと、例えば自動車学校近くの飲食店や、工場地帯で他に飲み食いできるお店が1キロ四方にはないというような場合を除いて、相席ですべての席が埋まるなどと言うことはまずありません。
また平日はよいとしても週末には客の流れは変わります。先ほどの自動車学校や工場のように土日は客はゼロでも、平日は安定した客足が稼げるというのならまだしも、お店の休みを何曜日にするかなどで売り上げは変動するのです。
もちろんこれ以外にも売り上げ変動要因として、コックさんの腕前などもあるでしょう。
いかしこれとても、住宅エリアの飲食店ではなかなか集客に結びつかないものですし、コックさんの腕前が客を呼ぶようになるには、やはり半年くらい時間がかかるでしょう。

何よりも重要なのは、この数字で計算すると、コックさんにお支払いする給料の方が、へたするとお店に残る利益よりも大きくなり、何のために起業したのかわからなくなります。
そして、これはごく一部のコックさんなのですが、いわゆる渡りのコックさんになると、あまり腕前がよくないのに、業界の手抜き方法などを知っていて、それでトラブルになる場合もあります。
オーナーが業界を知らないとわかったら、出入り業者を入れ替える、食材注文を自分でしたがる。メニューを得意分野に変えたがる、客に知人がやってくるようになる、自分が店主のように振る舞うようになるなど、理由は細かく書きませんが、とかく問題が起こりがちになります。で、ある日突然出てこないので、連絡しても電話にも出ない、で、やっと捕まえたら辞めますという話。月末に高額な牛肉の請求書が届けられる。こんなひどい人も中にはいるのです。
ただ、面接時には人当たりが柔らかくて、採用当初は一所懸命に働いてくれるので、オーナーさんは安心して心を許してしまうのですね。ひどいときには、お客さんと貸し借りのトラブルを起こしたり、レジの金がなくなったり。こんなトラブルでつまずいて嫌気が差して、閉店するというオーナーさんも本当にいらっしゃるのです。

もちろんそれはごく一部の人だと思いますし、実際に多くのコックさんは一所懸命に働いてくレルのですが、オーナーが超初心者で厨房のことが何もわからないとなれば、このようなつまらない出会いもあり得るわけです。
ならば、どうすればよいのか。
どんなに忙しくても、まずはオーナー自らが厨房を行うべきなのです。当然レジも、配膳も、後片付けも、トイレ掃除も、仕入れも、皿洗いも、すべて行うべきなのです。
忙しく飛び回るほど忙しければ忙しいほどよいのです。それは短時間にオペレーションをマスターできるからです。
特に食器洗いなどは、時間が少しでもあれば一番にやることです。
その理由は。
少し考えてください。そうすると皿洗いも苦にならなくなりますから。

で、どうしても忙しいのであれば、曜日とか時間を自分で拾い出してみてください。
なぜ○曜日の○時頃が忙しいのか。それがロケーションの特徴ならば、その時間にヘルプしてくれる仲間を探せばよいのです。
それもいらっしゃるのであれば、家族スタッフが好ましいのです。
ご家族は運命共同体です。お店の成功は、あなたの家庭の成功になるのです。会社時代とは違うのです。例えば1時間手伝ってもらったことでお店が1000円儲かるとなれば、お手伝いはしてくれるでしょう。また毎日たった1000円のために、きてくれるパートさんはいないかもしれないけれど、ご家族の誰かがお手すきであれば、手伝ってくれるでしょう。
開業時から青色申告するように申請しておけば、ご家族のパートやアルバイト費用も、必要経費として認められますから、お給料を支払うこともできるのです。つまりこれは売り上げや利益の少ないビジネスで家庭内留保という利益を確保する方法としても使えるわけです。
つまり高い給料で赤の他人を採用するよりも、一緒に働いてくれる家族に利益を分配するということになる訳です。

家族スタッフの活用で、少ない利益でも内部留保できるような経営計画をあらかじめ算定しておくのも、小さなお店作りでは大切なのです。

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